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「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫、第1弾〜第8弾まで)。世界一お節介で、図々しくて、孤独な人たち。でも、泣きたくなるほど、温かい。たった一度のあなたの人生を、もっと肩の力を抜いて生きていこう、と思うはず。どの話にもニューヨークでよく耳にする英語がちょっとだけ入っていて、ほっこりしながら英語も学べます。シリーズのどの本から読んでも楽しめます。シリーズはすべて、普通の文庫(紙)もKindleもあります。内容はAmazonでどうぞ。下のチラシをクリックす☕ると、「ニューヨークの魔法」シリーズの第1弾に飛びます。

 

ニューヨークの友人は親との間にいろいろな葛藤があり、さびしい思いをしてきた。彼女は私よりずっと年上で、私たち夫婦を家族のように思ってくれている。
今はもう、両親も妹も亡くなった。長年、セラピーに通い、親を許し、受け入れようと、少しずつ少しずつ努力してきた。
私も母とのことで長年、苦しんだ。母とは「ニューヨークの魔法」と真逆の世界。今この年になっても、母がそばにいると、「また何か言われる」と構えてしまう。
子どもの頃から、ごくふつうにごくふつうの会話を、楽しくすることがあまりなかった。
私の顔を見れば、不満と説教と愚痴。家に帰るのが、嫌だった。不満と愚痴は、今も変わらない。
父を12歳で亡くし、それから母が苦労したことは誰よりもよくわかっているし、感謝もしている。
でも、学校から帰って、「今日はどうだった?」と聞いてほしかった。それだけでよかった。
母は母なりに愛情を注いでくれたのはわかっているけれど、祖父母も父も、誰もが厳しい家庭で、母にはやさしくあってほしかった。祖父母も父母も皆が、「父親」の役割だったように思う。「母親」がほしかった。
子どものときに母に甘えたかった、という気持ちは、かなり最近まで自分のなかにあったのだろうと思う。


でも、母に求めることは、やめた。今は逆に、母が私にやさしくしてほしい、と思っているのだろうと気づくことができるようになった。
今の季節は毎朝、庭のよく熟れた柿にきな粉やゴマ、ナッツなどを入れてスムージーを作る。柿が甘くて、どんなデザートよりも美味しいと夫も毎朝、楽しみにしている。
母にも飲ませてあげたいと思って作ったけれど、嫌そうな顔でいやいや味見したと思うと、身震いし、「不味い!」とひと言。作っては、ちょっとだけ味見てみる? と母のもとに持っていくけれど、いつも反応は同じ。
「あんたはしつこい」と怒り出すので、母に作るのはやめた。
私が感情的にならずに穏やかに話し、母が食べたいと思うような料理を出すと、黙って食べている。「美味しい?」と聞くと、「うん」とひと言。
いい時はいいけれど、そういう時間は長くは続かない。どうして母は、マイナスの部分しか見ないのだろう。どうしてネガティブなことばばかり吐くのだろう。
娘だって感情があるのよ。母親の感情のはけ口じゃないのよ、ゴミ箱じゃないのよ、とさっきも言ってしまった。
娘には気兼ねせずに何でも言える。きっと私にだけは、気を許して何でも言えるのだろう。でも愚痴や不満ばかり聴いていることが、娘の大きなストレスになっていることに、気づかないのだろうか。
ニューヨークの友人に母とのことを話すと、誰もが「お母さんと離れたほうがいい」と言う。
でも、冒頭に書いたニューヨークの友人だけは違った。
Stay with your mother. Be kind to her and pray for her.”
お母さんと一緒にいなさい。お母さんをいたわり、お母さんのために祈りなさい。
そう言った。彼女の親が生きていたとして、それを今の彼女ができるのか、と聞いたら、難しいのだろうとは思う。でも、そういう思いで両親とのことを受け止めようとしてきたのだろう。
親と縁を切った友人知人は少なくない。アメリカ人も日本人も。
私はそれを選ばなかったし、これからもたぶん選ばないだろうと思う。
その友人が私に言ったことを、今ふと思い出した。
あなたのお母さんは素晴らしいことをしたわ。
私が首を傾げると、言った。
あなたのような人を生んで育ててくれたこと。

こんなことを書くと、なんだかおこがましいと思われるかな。
でもこれを今、書き終えて、友人のことばに目頭が熱くなった。
そう、母は何よりも大事な命を、人生を、私に与えてくれたのだ。

♡母の話は、「ニューヨークの魔法」シリーズの「ニューヨークの魔法は続く」や「ニューヨークの魔法のかかかり方」に出てきます。

Photo:この夏、ニューヨークの地下鉄で目の前にすわっていた母と娘ーー(許可を得ています)。