パリのレ・アールにあるカフェで見たW杯の対ベルギー戦。フランスなので、ベルギーを熱く応援する人たちが多かったけれど、試合が終わると皆、温かい拍手を送っていた。素晴らしい試合だったという両国の日本選手への思いだろう。

試合終了後、トイレを待ちながら立ち話した男性は、「僕はフランス人だけど、ニッポンを応援していた。日本は素晴らしかった」と。

試合の時にカフェで隣にすわっていた男性ふたり(ここでは出身地は出しませんが)。「僕たちはニッポンを応援しているんだ」と、日本の点が入るたびに私たちと喜んでくれていた。

試合の途中でカフェがざわつき、誰かが思い切り走っていくのを見ている。ふと隣を見ると、日本を応援していたふたりが消えている。飲んだビールのグラスを残して。

私は後ろを振り返る。そこには、さっきからベルギー国旗を手にベルギーを応援しているふたりがいて、私は日本が2対0で勝っていたので、「すごいでしょう!」と自慢していたのだ(そのうちのひとりはトルコ人でしたが、ベルギー人と一緒にベルギーを応援していた)。

ベルギー人が言う。「そこにすわっていたふたりだよ。金を払わず、逃げたんだ。君たちの財布や携帯は盗まれていないか?」

「君の“トモダチ”で、日本を応援してるって言ってただろ。ほらな、ベルギー人のほうが、いいやつらなんだ」と笑った。

しばらくすると、隣にすわっていた彼が硬い表情で戻ってきた。奥でお金を払っている。

支払いのときに話した女性のウエイトレスが、「さっき追いかけていったのは、私よ」

「あなただったの?! 相手が男性なのに、よく追いついたわね」

「追っかけて捕まえなきゃ、代金を私が払わなければならないのよ」と言った。

そりゃあ、必死で追いかけるはず!

あんなにステキな笑顔の人なのに。彼らが応援してくれていたことを喜んで、読者の人もコメントくれたのに。そしてそれを読ませたら、喜んでいたのに。彼のフェイスブックを見ると、投稿には友人たちからたくさんの「いいね」やコメントが寄せられている。哀しいな。

ベルギーと同点になったとき、ベルギー人が一緒に写真を撮ろう、と携帯を持ってやってきた。それがこの写真。日本だと見えちゃいけないものが見えちゃってるけど、でもフランスだと誰も気にしないから、許してね。

この写真はカフェの最寄りのメトロ駅。

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