ビルからもらった指輪のあとーー。私の最新刊エッセイ集を出版した清流出版社長の藤木氏は、この話が好きだ。
12月の講演会で、最後に私はこれを朗読した。新刊の担当編集者でもある藤木氏が、自分のフェイスブックに書いた文章を紹介しよう。
写真はこの話に出てくるサラ。彼女の夫ビルは、医療ミスで車椅子の生活が十数年間続いたあと、数年前に亡くなった。マンハッタンにある彼女の家のキッチンで、ディナーの準備をしているときに撮った。わざとぼかして撮ったのだが、新聞社の元上司には「こんな写真を使うのか」と驚かれた(…でも使った!笑)。
私は、新刊に収録されたエッセイの中で、「ビルからもらった指輪のあと」が好きです。多分、少し年を重ねた人向きかもしれません。人生の哀しさと、愛と、苦さが入り混じったなかに深みを感じます。まるで一遍の短編小説のような味わいがあると思っています。
人には、誰にも言えない哀しい体験があるはずです。それでも、それなりに誇りを持って、自分を支えて生きていく。
登場するサラは、著者である岡田さんに、亡くなった夫の記念の「指輪をはずして、新たなボーイフレンドを見つけに行く」という言葉で、癒しようのない孤独を語り、嗚咽します。
こうなったら、悲しむ人に私たちができることは、岡田さんがしたように、その人の肩をそっと抱きしめるだけしかないでしょう。
宣伝になってしまうかもしれませんが、この本には読む人の年齢、状況に応じて異なる感動があると思います。若い人には、若い人なりの、中年には、中年の。わかるのは、やはりいろいろな人々と関りながら生きていく素晴らしさではないでしょうか。
心から、読んでいただきたいと思うのです。
〈この話に出てくる英語のことば〉
That’s what Bill wanted for you.
ビルもあなたに、そうしてほしいと思っていたわね。
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