Paris, France—「美味しそう。それ、何?」

パリでエッフェル塔のそばにあるバスク料理のレストランは、地元の人たちで混み合っていた。隣のテーブルの美しい女性に声をかける(写真1)。


外国語でメニューを見ても、いったい何が出てくるのか、想像もつかないことがよくある。回りのテーブルでほかの人が何を食べているか、こっそりと見てみる。そして、様子を見て、声をかけてみることもある。

「これ? 豚の耳よ」


豚の耳! そういえば、フランスでは豚はすべての部位を食べるようで、豚の耳がそのままの姿でお肉屋さんで売られている。

 私が驚いたので、テーブルにいたみんなが、どっと笑う。
「食べてみなさいよ」
その女性がわざわざ何切れか小皿に取り、私に手渡してくれた。
ちょっと臭みがあるけれど、コリコリして、美味しい! そして、お皿もお洒落。

 これは前菜で、そのあと主菜もしっかり食べている。彼女はパリ出身。イタリアのシチリア島の出身のご主人とその家族と一緒に、パリに戻ってきたという。

 写真を撮ってもいい? と聞くと、もちろんよ、と撮らせてくれた。

  結局、私たちの前菜は豚の耳ではなく、名物のマテ貝のソテー(Couteaux Planchaー写真3)。

主菜は夫がビーフの赤ワインソース煮(Entrecoteー写真4)、私は骨付き子羊の香草バター焼き(Cotes D Agneau)。どれも美味しかったが、とくにマテ貝の味付けが最高。

 シシリー出身のご主人に、「フランス料理は美味しい?」と聞いてみた。
「…う~ん。フランスでいいのは、ワインくらいかな?」
「それと、エッフェル塔ね(写真2)」と女性。


やっぱり、自分のお国の料理が一番なのね。

 ほかの人も料理の写真を撮らせてくれた。
「ねぇ、俺の料理の写真も撮りなよ」とご主人のお父さんが私に言う。
「あなたのは私が頼んだのと同じだから、いいわよ」と答えると、「いいから撮れ」と言うので撮ってあげたら、嬉しそう。

「ねぇ、君、いったい写真、何枚撮った?」とお父さん。
「たくさん撮ったわ」
「5枚撮ったら、5ユーロいただかないとな」とお父さんが笑う。

 しばらくして、「あなたたち家族の写真を撮ってもいい?」と声をかけると、みんなが「もちろん」とうなずき、お父さんが私を見たので、「あなたの言いたいことはわかってるわよ」と言うと、みんなが爆笑した。

 美味しい食事に楽しい会話。食事はこうでなくっちゃね。

 お勘定が、缶詰の缶のふたに挟まれてでてきて、なんだかおしゃれ。でもこれは店が特別に作ってもらっているものだという。

 改めて写真で見ると、お父さん、意外にまじめな顔してたんですね。