母校の同窓祭に母と行く

母と一緒に青学へ行ったのは? 高等部の入試発表のときしか思い出せない。あのときは受験番号を見つけて、飛び上がって喜んだ。

今年は珍しく、大学同窓祭のこの時期に、日本に戻ってこれた。私がどこかへ行こうと誘っても、母はいつも「行かない」と答える。行かないだろうと思ったけれど、昨日、母に聞いてみた。「青学でお祭りがあるけれど、一緒に行く? 縁日みたいに出店が出るよ」と。「う…ん、行ってもいい」と言うので、驚いた。

母はいつのまにか、歩くペースがとても遅くなった。それでも地下鉄に乗り、階段を上り下りして、東京・杉並の自宅から表参道駅へ向かい、大学まで歩いた。キャンパスに入ると、銀杏の香りがたちこめていた。

青学らしく、同窓祭の開会式は、祈りとともに礼拝堂で行われる。青学には礼拝堂がいくつかある。いつもは見ることのできない、趣のある小さな本部礼拝堂で朝9時過ぎから行われた。そこから母と参加した。朝晩、仏壇に供え物をし、お線香をあげている母が、私の隣で賛美歌を歌おうとし、祈りを口にしようとしている。プログラムに印刷されたマタイによる福音書5章13ー16節の「あなたがたは世の光である」のところを私が指さし、母に「私の名前だね」とささやくと、「ほんとだ」と興味深そうに聖句を目で追う。

熱心な仏教の家庭で、いつもお経を聴きながら育った私は、高等部に入った頃、キリスト教の礼拝にとても違和感を覚えた。中等部からあがって来た人たちが、とても大人っぽく派手に見えて、私とは世界が違う気がした。やっぱり公立校にすればよかったと、家に帰っては愚痴を言い、母を困らせた。やがて私は、その高等部で夫と出会い、青学でキリスト教に触れたことで、のちにニューヨークで洗礼を受け、クリスチャンになった。そんなことを思いながら今朝、母の横で礼拝しながら、胸がいっぱいになった。

キャンパスの奥に設置されたステージの前で、吹奏楽バトンが練習している。母はその前のベンチにすわると、iPhoneをオンにし、写真を撮り始めた。iPhoneで写真を撮るのは、なかなか難しい。撮りたいものを、うまく画面に収められない。それでも、何度もやり直し、一生懸命に撮ろうとしている。楽しんでいるのだと思うと、それだけで嬉しかった。吹奏楽バトンが練習を終え、正門に戻ると、銀杏並木をステージに向かって、行進してきた。ステージでの演技を写真に収めようと、母はiPhoneを構えている。と、スタッフが現れて、私たち観客に、撮影禁止を告げた。「どうしてダメなんだろうね」とがっかりしている母が、気の毒になる。

40cmほどありそうなアメリカンドッグをふたりでそれぞれ食べてから、私は母を残して、1時間、英米文学科同窓会の講義を聴きに行く。母はその間、ひとりだった。いろいろな催しをやっている教室を回ると、スタンプがもらえるスタンプラリーがあるようだった。5個集めると1回、10個で2回、抽選のくじを引けるらしい。母はこういうのが、大好きなのだ。

「スタンプを集めてきたら?」と言うと、「いいわよ。ただ外ですわって待ってるから」と答えたけれど、「やっておいでよ。教室がわからなければ、誰かに聞けばいいよ」と言うと、その気になったようだ。催しものをやっている建物に母を連れて行き、私は講義へ向かう。カズオ・イシグロの「日の名残り」について、同学科の教授が講義する。一緒に参加した友人とは、高等部で最初に友達になった。渋谷駅まで一緒に帰り、いつも迷って井の頭線の改札口までひとりで行けない私を、彼女がそこまで連れていってくれた。

この友人は最初、「光世に会うために、講義が終わったら教室で待ってるね」ということだったのに、「やっぱり、講義を受けることにしたよ。昨日、キンドルで本を買って、もう読み終えた」と言う。さすが、彼女らしい。

彼女は卒業以来、青学職員としてずっと働き、今は管理職だ。講義が終わり、ふたりで私の母のところへ行く。母も彼女のことを、よく覚えている。母はスタンプを7つも集めてきた。3人で一緒にあと3つ集め、母はうれしそうにくじを引いた。気づくと、青学のグリーンのバッグを手に持っている。中には入学案内や大学のカタログが入っている。「あのバッグがいいなと思って。そしたら、くれたの」と母。(入学案内もカタログも無駄にはしませんので。すみません…)。

3人でお茶して、そのあと、ばったり会った友人夫婦が、母と私にどら焼きをプレゼントしてくれた。そして、みんなで学食で食事。カレーが大好きな母は、300円のカレーセット。友人と私は500円のビーフシチュー・セット。ビーフシチューは、どら焼きをくれた友人のおすすめだ。

いつもヨットに乗せてくれるYさんは、「暑いから、お母さんが熱中症にならないように」、「風が強いから、気をつけて」と、心配して何度もメッセージを送ってくれた。あちこちでばったり出会った友人たちも、母にやさしく言葉をかけてくれて、母は幸せそうだった。

大事な休みの日なのに、母につき合わせてしまって悪かったな、と思い、友人にメールしたら、こんなメールを返してくれた。

こちらこそ、ありがとう!
私ひとりだったら、テキトーにぶらっと回って終わってたと思う。
お母様のおかげで、いろんなところを見られて感謝しています。
私の母は出かけるのが好きじゃなかったので、あんな風に一緒にイベントに行くなんて考えられなかったよ。お母様がお元気な間に、たくさん楽しいことしてね!

温かい仲間たち、ありがとう。そして青学、ありがとう。ここで学べたことは、私の宝です。

この写真は、今日の母の勝利品 (^。^)

この写真は、キャンパス内のBOOK CAFE。ここではいつもこうして、私の娘たちを並べてくれるので、私も今日、自分で3冊、買ってきました。

10/4銀座と12/14池袋のイベントについて、こちらにまとめました。満員で銀座に参加できない方、池袋でお待ちしていますね! https://okadamitsuyo.com/newsitems.html#20190908_news

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