モレ・シュル・ロワンのとけない魔法

印象派の画家シスレーが、絵を描きながら、晩年を過ごしたフランスの小さな村ーー。モレ・シュル・ロワンは、パリから電車で1時間。村に入った瞬間、ここに住みたい、と思った。

水に囲まれ、のどかで美しい。しかも、ナビゴーという1週間(or1か月間)乗り放題の、パリ市内も巡るのに使うパス(1~5ゾーン)で行けるのだ。

印象派の画家、シスレーが、絵を描きながら、晩年を過ごした。かつては河川貿易で栄え、ワインやなめし皮、木材などが、この村からパリへ運ばれていった。

赤いパンツの男性が、リュックにバゲットを入れて歩いていた。いかもフランスらしくて、こっそり後ろから撮らせてもらったあと、彼のあとを追いかけた。

写真の許可をもらうために声をかけると、ああ、これ、フランスっぽいですからね、と彼が答えた。

しばらく立ち話したあとで、彼が言った。

いつまでこの村にいるのですか。え、もう今日、パリに戻る? もしあなたたちがよければ、ですが、ランチをご一緒にいかがでしょうか。いつもの週末のカジュアルなものですが、もしよければ、我が家にこられませんか。僕の独断でもちろん、妻には何も聞いていませんが。

彼は手にケーキの箱か何かを持っていた。
ただ、家族の分しか買っていないので、買い足しに行かなければなりませんが、と彼。

では、私たちが何か買って伺います、と話すと、いいえ、僕が招待したいのです、と言う。

奥さんを家に置いて、村の中心までちょっと買い物に来たのだろう。突然、見も知らぬアジア人を連れて帰ってきたら、奥さんはどんな反応をするだろう。予期せぬ来客は、嬉しくないだろう。奥さんのことを思うと、私は心配になった。

先に奥さんに伺ったほうがいいのでは? と私。
いえ、妻はやさしい人だから、大丈夫だと思いますよ。

でも、せっかく、親切そうな彼が、そう言ってくれているのだし。
少し離れたところに立っていて、話の成り行きを知らない夫に、男性の厚意を説明すると、それは嬉しいね、と夫は言った。

それでは喜んで、と私は答えた。

水辺のクレープ屋さんでランチを予約したばかりなので、キャンセルしてきます、と彼に言うと、僕が言って店の人に説明しましょうか、と聞いてくれたが、いえ、その人は英語がわかるので大丈夫です、と答え、私ひとりで店まで走った。

彼と出会った場所に戻り、夫と私は彼の車に乗り込んだ。

奥さんには連絡しましたか、と私が聞いた。
はい。メッセージを送りました。
何て?
ゲストを連れて帰るよ、と。
で、奥さんの返事は?
ゲストって誰? もっと詳しく教えて、と返事がきました。
で、何て答えたんですか。
それはサプライズだよ、と。
サプライズ…って、本当に大丈夫なのか……。
男性は、転勤でノルマンディからパリに引っ越し、ずっと前にこの辺りに買っておいたその家で、これからは週末を過ごすことになるという。

車が彼の家の前に到着した。
奥さんに石を投げられたら、どうしよう…と私が笑う。
男性はほほ笑み、言った。
石を投げるとしたら、投げられるのは僕でしょう。

ーー続きはまた、書きますね。

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