もうひとつの目を入れないと、ね。

 硫黄島で日本兵と戦ったドンに、再び会いに行くことにした。彼の家に電話すると、電話に出た男性が、「ドンは話せないから、妻のアンに替わるよ」と答えた。アンは私だと知ると、嬉しそうな声になったが、「ドンはもう長くないの…。ドンと話してみる?」と言った。
 しばらくして、電話の向こうでHelloという弱弱しいドンの声が聞こえた。
「光世よ。私のこと、覚えてる?」
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 Of course, I remember you. How can I forget you?(覚えてるに決まってるだろ。忘れるわけがないじゃないか)
 苦しそうだが、一生懸命話そうとする。「なんだか知らないけど、声が出なくなっちまって、このままオレは死んじまうのかな」とドン。
「そんなことないわ。FBの読者の人たちが、夏にあなたに会いに行った投稿を読んで、「アンといつまでも元気でお幸せに」と祈ってくれていたのよ」
 そうか、そうか、とドンは言った。
「ドン、私、会いに行くから。またいっぱいおしゃべりして、いっぱい笑って、元気になるわ」
「来てくれたら、本当にうれしいよ」
 最後にアンが電話を替わって、驚いたように言った。「ドンがあんなにはっきりしゃべっていて、びっくりしたわ。しばらくなかったことだわ」。そして、言い添えた。「もう一つの目を入れなければならないからね」。
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 アンは覚えていたのだ。昨年夏、私が小さなダルマをあげたとき、ドンが片目を塗った。「もう片方の目は、今度、私と会った時に塗ってね」とドンに言ったことを。
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