あと何回、桜をふたりで　

あと何年生きられるとして、桜を見られるのはあと何回ーー。なんて思ったらーー。

夫が学会に出かける前の朝の慌ただしい時間で、４０分ほどしかなかったし、曇り空だったけれど、今朝、東京の自宅から歩いてふたりで桜を見に行くことにした。

短い時間なのに、意外にゆったりとした気分で過ごせるものだと、ふたりで驚いた。

「あれは鵜飼の鵜だよ。不思議な格好で電線に止まっているね」（私には真っ黒な物体にしか見えないゾ）などと言いながら。

色鮮やかな装いでジョギングするカップルを眺めたり……。

帰りに通りかかったパン屋さんの隣で、焼き立ての食パンを１００円で売っているのを夫が発見。おじさんに１００円玉ひとつ渡し、そのまま受け取る。
「こういう寄り道が楽しいね」と夫。そういうことに、喜びを感じてくれる夫がうれしい。

もう朝食を食べたあとだったけれど、焼き立てだったし、ふたりとも食べたくなった。
「どうやって食べたい？」「オレはトーストにバターだけ」「私はね…真似しないでね」「しない。オレは基本に忠実なんだ」。

夫はお好みのトーストをひとかじりすると、「喫茶店のモーニングみたいだ」と満足気。私はトーストにバターをたっぷり塗ったのをふた口楽しみ、あとはその上にカナダのメープルシロップとシナモンをかけ、「ううううん！　サイコーだね、これ」と食べていたら、「オレも…それ…」と夫。

どちらかひとりがいなくなったとき、思い出すのは、こんなたわいもないひとときなんだろうな。幸せって、こういうことなんだな。