母であるということ

NY行きのフライトで私の隣にフィリピン系アメリカ人の女の子、そして通路側に母親がすわっていた。娘が目の前のスクリーンを触ろうとすると、「No screen time for you.(スクリーンを見ている時間はないわよ)」と母親の厳しい声。娘のテーブルの上にはワークブックが置かれている。

「え、スクリーンを見れる時間はまったくないの?!」と私が大げさに驚いてみせる。
「そうよ。1週間、学校を休んで、宿題がたまってるんだから」と母親が私に向かってほほ笑む。

親戚の結婚式でフィリピンを訪れた帰りだという。成田で乗り換え。娘はおとなしく、せっせと宿題をこなしている。
厳しいお母さん! 可愛そうに。13時間のフライトで、アニメもゲームもお預けなの?

 と、飛行機が離陸する瞬間、女の子が母親に向かって手を伸ばし、母親がその手をぎゅっと握った。飛行機が舞い上がり、飛行が落ち着くまで、ふたりの手はしっかり握り合ったまま。母親が娘の髪にそっと口づけする。私と目が合うと、母親がほほ笑む。

 母であることを知らない自分が、ふとさびしくなる瞬間。

それでも、前とは違う。ふたりを見つめる私も、笑顔になっている。

外は雨上がり。窓には、夕日に光る雨の滴(しずく)ーー。

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女の子は母親に寄りかかって少し眠っていたけれど、母親が寝ている間もずっと、JFKに着陸するまで、小さな手に鉛筆を握りしめて、算数と英語の問題をとき続けていた。

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