銀座を案内するーその②

銀座でデパ地下を見せてやってほしい、と頼まれていた。本当は16歳の少年だけを案内するはずだったが、同じツアーに参加していたアリと彼の両親に地下鉄駅でばったり会い、一緒に行動することになった。

三越で生鮮食料品を見ていると、アリの母親が1380円の本マグロの刺身のパックを手に取り、しげしげと眺めている。本マグロは食べたことがないから、試してみたいという。

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「でもすぐにホテルに帰るわけじゃなし、持っていくのは無理だろ。冷蔵じゃないし」と私の夫。

「じゃあ、閉店間際に買って、ホテルで食べたら?」と私が提案する。
魚コーナーを去り、和牛やら千疋屋のフルーツのケーキやら、私の説明を興味深そうに聞きながらも、アリの母親には気になることがあった。
「ねえ、あの本マグロだけど。今買って、みんなで食べましょう!」
「はい?」と夫は唖然とする。「ホテルで食べるんじゃなかったわけ・・・?」
「今すぐ、食べたいらしいよ」と私。
「今って、どこで食べるんだよ」。私たちは辺りを見回す。イートインの場所など、どこにもない。
「ま、ここじゃちょっとできないけど、外で食べればいいでしょ」と私。
「外ってどこだよ?」
「道端」
「道端って、銀座の街中で、パックのマグロを食べるのか?」
私たちが言い合っているのを聞いて、アリの母親、これはあまりよろしくないことなのかもしれない、と察したらしい。
「ナニ、ナニ? 何か問題なの? ここでマグロを食べるは、もしかして、無礼なことなの? ねえ、無礼なの?」
「・・・ん。ブレー・・・ってゆーか・・・フツーじゃない。とくに私の夫的には」と私。
夫は口をぽかんと開けている。
「ええ、フツーじゃないの? だったら、やめましょ」
「オッケー、オッケー、大丈夫。ほら、マグロ、値引きされてるわよ。ラッキーね」
「どうして、値引きなんかするの? モノがよくない、ってこと?」
「モノはいいわよ。ほら、賞味期限が今日でしょう。日本は、夕方になると値引きされるのよ」
アリがレジに並んでいる間、彼らは興味深そうに魚の刺身や切り身を眺めている。「切れてないから、こっちの方がお得だよ」と、夫が塊のマグロを指さす。
そうだよね。それをみんなで回しながら、ひと口ずつ、銀座の街中でかじったらサイコーだね。
マグロの大きな目玉が2つ並んでパックになっていたので、彼らに教えてあげる。
「まさか、これ、食べるんじゃないでしょね」
「目の周りのゼラチンは、美味しいでしょ」と私。
母は気味悪そうにうなずく。
そういえば、レジに並んでいるアリをほったらかしだった。慌ててレジに行くと、どうやら今度もまた、「ハジメマシテ」をハジメたらしい。レジのお姉さんが、うれしそうに日本語で応対している。
「お箸、いくつお付けしますか」
「え…と、ファイブ」とアリ。
たったひとパックのマグロの刺身に、5膳も箸を付けてもらうからには、理由を説明しなければ、とジャパニーズな私は思う。
「これ、今、食べたいって言うんですけど、場所、ないですよね?」
「9階の屋上がテラスになっていますので、そこでお召し上がりいただけます」

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夫はほっと胸をなでおろす。私たち5人は本マグロのパックを手に、嬉々としてエレベーターで9階へ向かう。
テーブルをゲットし、まん中におもむろにマグロのパックを置く。箸を使って、ワサビと醤油を付け、落としそうになりながらも、なんとか口までマグロを運ぶ。

11722220_1137098012983726_276496754543958571_oアリと彼の両親は、「美味しいね!」と大喜び。「それ、ダイカン!?」と物凄い発見をしたかのように、母。

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ああ、ダイコンね。大根はdaikonと書かれて、アメリカでも売ってるものね。ダイカンのツマも一緒に食べ、3人は大満足だ。

11713670_1137097896317071_7329647975290579545_o16歳の少年だけは、「ノーサンキュー」とまったく口をつけようとしないけれど、異文化体験はいつでもどこでも楽しいね。

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