夫の大粒の涙

15日間のベトナム旅行のフライトやホテルを、昨夜遅く、すべてキャンセルした。今夜から成田のホテルに泊まり、明日のクリスマスの朝、発つはずだった。

一人暮らしの義父に、夫は毎日のように電話して様子を聞いていた。最近、仕事が忙しくて、なかなか顔を出せなかったが、昨日、久しぶりに訪ねた。

義父は健康だったのに、食べることも飲むこともしなくなっていて、突然、痩せほそってしまった姿に、昨日、夫はショックを受けて帰ってきた。

旅に出るはずだったから、昨日の夕食は、冷蔵庫にある野菜でミネストローネを作ろうと思って、野菜を炒めておいたけれど、急遽、夫が大好きなチキンのワイン蒸しに変更した。

「あなたが元気になるように、これにしたよ」と言うと、「いい匂いだね」「美味しそうだね」と嬉しそうだった。キッチンは寒いから、2階にいていいよ、と言ったけれど、夫はそこに立っていた。

義父は、医者に診てもらうのを頑なに拒む。義母が床ずれの治療のために入院したまま、どんどん弱り、機械につながれて病院で亡くなったからだ。

義父は自分の息子たちにさえ、「来るな」と言う。でも、1人にしてはおけない状態なので、昨日は義兄と夫が義父の家にいた。

「親父が、今日は息子2人が来てくれていいなぁ」って言ってたよ。で、オレが帰ろうとすると、寝ていたのに目を開けて、「お前、もう帰るか」って・・・」

「前は、あんなに美味しそうにビールを飲んでたのにな。2本も飲んでたんだよ」

「なんでこんなにさみしい終わり方になっちゃうんだろ」

そう言うと、夫は下を向いて嗚咽しながら、ぽろぽろと大粒の涙をこぼした。こんな大粒の涙があるんだ、と思った。黙って夫をハグした。ずっと。

「今日は白ワイン飲もうか」と私が言うと、少し笑って「いや、いい」と答えた。でもあとでしっかり、ふたりで飲んだ。

旅はいつでも行ける。でも、愛する人と一緒にいられる時間には限りがある。予約したフライトやホテルのお金はずいぶん失ったけど、また働いて貯めればいい。

今朝、夫は義父の家に泊まりに行った。私もちょっとだけ顔を見たいと思い、支度をしかけたけれど、やめた。人といるのは気を遣うから、疲れるようだ。

義父に会いたいけれど、「家族以外は…」という雰囲気だ。私は「家族」ではないの? とさみしい思いはとてもある。でも、義父や夫の気持ちを尊重すべきなのだろう。手作りの3食分のお弁当と、庭の大きな柿2つを手渡し、送り出した。

クリスマスイヴの今夜は成田のホテルで過ごす予定だったけれど、ぽっかり空いたひとりの夜。聖夜賛美礼拝に出ようかな。

みなさん、素敵な一日を。Merry Christmas❤️

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