コロナ禍の「紀尾井町のとけない魔法」かな。

今年4月、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで、和服姿の若い女性のグループを見かけた。初々しくて嬉しそうにはしゃいでいた姿が幸せそうで、遠くから彼女たちを入れて写真を撮った。でもこそこそ撮っているのは後ろめたい。近づいていき、「写真を撮ってもいい? じつはコソコソ撮ってたんだけどね」と声をかけて見せると、喜んでくれた。

今度は許可をもらって、堂々と撮る。撮った写真を見せると、さらに喜んでくれた。「お友だちなの?」と聞くと、「成人式のお祝いなんです」と答えた。

「おめでとう」と祝福し、写真を送る約束をして、別れた。

その後、写真を送るために連絡先を教えてくれたKさんから、私に送られてきたメッセージで、あの集まりの意味がわかった。

彼女たちはキリスト教系の私立高校の卒業生で、成人を迎える卒業生のために祈る「成人式礼拝」という同窓会があるという。今のように20歳で成人式を祝うようになったのは、戦後のこと。それ以来、この高校で途絶えることなく行われてきた「成人式礼拝」が、今年はコロナ禍で中止になった。

「そのあとみんなで、ドレス着てホテルでパーティして高3の創作ダンスを見るのが恒例でみんな楽しみにしてるやつだったんです・・」

代表して写真を送ったKさんが、そうメッセージを書いてくれた。そして、おそらく正式には「成人祝福式」と呼ばれる過去の同窓会の写真入りの様子を、送ってくれた。礼拝堂らしき場所で、晴れ着姿の若い女性らがひとりひとり前に出て、頭に両手を添えられ、祝福を受けている。

私が撮った写真をまとめてKさんに送り、「またどこかで会えますように」とメッセージを書いた。

しばらくすると、「みんなからお礼メッセージを預かってきました!」とメッセージが届いた。

「私たちの代は成人式という大人になるという節目も中止、人からなかなか祝ってもらえることもない中で成人を迎えることになりました。そんな中、話しかけてくださって、私たちのやっとできた小さいながら大切な、成人のお祝いの瞬間を写真におさめてくださりありがとうございました。とても素敵な思い出になりました」

「お声がけくださり、とても嬉しかったです」

「たくさんのお写真を撮って頂きまして、ありがとうございました💚 どのお写真も本当に素敵で、皆で感激しております。一生の宝物になります」

「20歳という節目の貴重な思い出の1つとなり、とても感慨深いです。お祝いの言葉を頂いたこと、再度感謝申し上げます」 

Kさんは「いただいた写真が素敵すぎてLINEスタンプも作ってしまいました!」というメッセージの後で、「あと運命を感じたのですが、これ岡田さんの著書ですよね?」と画像を送ってきた。「小学5年 国語」の教材に読解問題として使われた、私が書いた「ニューヨーク日本人教育事情」(岩波新書)の抜粋だった。

Kさんはこの教材を作ったSAPIXという学習塾で教えているという。 そして、Kさんが書いてくれたメッセージ。

「生徒に「先生の知り合いなの」と言ったら、みんな格段にやる気出ました! すごくいい文章ですね! 全編読んでみたくなったので図書館で借りようと思います!……本当に運命的な出会いですね。私、職業上、言霊って信じていて、岡田さんが写真を送ってくださった際、『また、どこかで会えますように」って言ってくださったから、教科書を通して出会えたのかなって思います」

Twitterのプロフィールを見たら、KさんはNHKやTBSのドラマや、いくつもの舞台、CMにも出ている平田こころさんという女優でした。この投稿と写真は、こころさんとお友達の許可を得ています。

読解問題

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