そういえば、こんな話があったっけ。マンハッタンの市役所で簡単な式を挙げたばかりの新郎新婦を見かけた。
許可をもらってこの写真(1枚目)を撮り、背景の建物も素敵だったのでふたりに見せると、とても喜んだ。
そして、彼の口から意外な言葉が。
「もしよかったら、お支払いするので、もっと写真を撮ってもらえないでしょうか」。
彼はプロカメラマンの名刺を手に持っていた。「いや、この人を雇ったわけじゃないんです」。
もしかして、私をプロカメラマンと勘違いしている?
お金を払うから写真を撮って、なんて言われたことはこれまで一度もない。
前代未聞のシチュエーションにちょっとワクワクし、躊躇しながらも「いいですよ」と答えてみた。
そばに彼の両親もいた。新婦はドイツ人だという。
式を挙げた建物を背景に撮ってほしいというので、そこで10枚ほど撮った。が、プロが持ち歩いているような機材は何もない。私のカメラには、フラッシュもない。
何しろ、ふたりの顔の色があまりに対象的で、とても難しい。もともと、お金を受け取るつもりはなかったし、お金をもらうような出来ではない。
でもふたりは、撮った写真を見せると、とても喜んだ。そして、新郎が財布からドル札を取り出した。「これでいいでしょうか」。50ドル札だった。
「いえ。写真はおふたりへ私からのお祝いです。お金は受け取れません」と言った。が、彼は譲らない。「受け取ってください。本当にうれしかったから」。
このあと、レストランで四人でお祝いの食事をするという。「そんなファンシーな店ではないんですけれど」と新郎がぼそっと言った。
50ドル札を手に、私は複雑な心境だった。
フォトショップなどを使ったことがないから、修正できなくて申し訳ないけれど、このまま送ります、と書き、翌日、ふたりに写真を送った。すぐに喜びのメールが届いた。
数日後、ゲイル(「ニューヨークの魔法」シリーズの登場人物)にこの話をした。
「ナニ? 10枚しか撮ってないのに、50ドルもくれたの? いいわね。白人と黒人の顔の写真を撮るのは、すごく難しいのよ。私に送ってくれたら、修正してあげるわ」と心優しいゲイル。
修正されるはずの写真は、いまだにゲイルから届かない。ゲイル~、あれから2か月だよ~。
★講演後、親睦会にも参加される方へ。5月17日必着で振込をお願いします💜。皆さんに会えるのを楽しみにしています💜 詳細はこちら➡