台南の苦く甘い思い出

台湾でかき氷屋に入った。隣のテーブルのおじさんが、切ったトマトにタレをつけて食べていた。物珍しそうに写真を撮らせてもらっていると、店のおばさんが奥からつかつかと歩いてきて、強い口調で台湾語で「一体、何してるんだ?」と言っている(たぶん)。「不思議な食べ物だったんで…」と私はおどおどしながら答える。おばさんは店に貼られたメニューの前に私を連れていき、漢方と生姜が何たらこうたらと説明すると、そこにすわれ、とテーブルを指さす。

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隣のおじさんたちと話していると、おばさんが戻ってきて、テーブルの上にトマトとタレを置き、「食べろ」と言う。きょとんとしていると、「大丈夫、食べなさい」というようにうなずき、「サービス」とほほ笑んだ。
恐縮して「しえしえ(謝謝)」と何度もお礼を言い、恐る恐る食べてみる。トマトが固いわ(何しろ、まるでスイカのように外側は緑色ですから。隣のおじさん曰く、こうやって2色になっているのが最高なんだよ)、もろに漢方と生姜だわ、という衝撃的な体験だったのだが、皆、固唾をのんで私の反応を待っている。冷静さを装い、「ほーちゃー(味食)」(美味しい)とつぶやく。

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おばさんは満足そうににっこり笑うと、「ゆうえんちゃんりしょんくぇ」とか何とか言いながら、メニューの紙の裏に漢字を連ねた。

「有縁千里来相會」

 縁があれば、千里離れていても会うことができるーー。

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Photos: Gaoxiong, Taiwan

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