皆既月食と家族

The total lunar eclipse (Tokyo, Japan) 月食の夜。オレンジ色の月をベランダから愛でる。12月刊行のニューヨークのエッセイ集の作業をひと休み。写真を撮っていると、「お義姉さ~ん」と声がする。二軒先に住む下の弟(私には弟がふたりいる)の嫁だった。義妹も道端で月を眺めていた。 とぼけた母が真面目な顔で、「ねぇ、あれ、太陽?」と聞く。 それほどにオレンジ色だ。

20141009_皆既月食

その母、おとといは帰宅するなり、「どうしてちっとも携帯電話に出ないの! 今夜のおかず、何にするかわからないから、ずっと電話してるのに!」と怒っている。 私のアイフォン、ほかの人からは電話を受信できる。母はどうやら自分のアイフォンがおかしいことに気づいたらしく、私に頼むと、お互い短気なので何かと喧嘩になるので、昨日の夕方、今度は上の弟の嫁に直してもらっていた。

どちらの弟家族も、すぐ近くに住んでいる。 その義妹が母のアイフォンを見ながら、笑う。「電話がかからないわけですよ。お義姉さんの携帯の電話番号が、『今夜、(おかず)何にする?』になってるんですから」。 母、メールはできないのだが、私が海外を旅している間に、アイフォンでメッセージを送ることをマスターしたらしく、ときどき、送ってくる。  昨日、メッセージを私に送ろうとして、アドレス帳の私の電話番号のところに、代わりに打ち込んだらしい。 照れ笑いする母。やさしい義妹ふたり。 もっと家族と過ごす時間を大切にしないとな。 オレンジ色の月を見ながら、思う。

写真:三脚は面倒なので使わず、手持ちでLUMIXの小さなカメラで撮ったわりには、きれいですよね?(自画自賛)

岡田 光世  / Okada Mitsuyo

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