懐かしいサーカスの思い出

地下鉄で席を譲ってくれた長髪の男性と、老夫婦と私の4人で、おしゃべりが弾んだ。私が日本人と知ると、「SIGH(サイ)」っていうメタルバンドが日本にあるだろ。「LOUDNESS(ラウドネス)」も世界的に有名な日本のバンドだぜ」と興奮気味。彼はボーカルとベースをやり、詩も書くという。
この人は声がとても大きい。しかもメタルバンドの話になると、昂奮して、さらに声が大きくなる。ろれつが回らないような話し方なのだが、もしかすると、昨夜のアルコールがまだ抜けていないのだろうか。でも、酒臭いわけではない。
おじいさんは、サーカスの話になると、うれしそう。リングリング・ブラザーズ…は、150年近い歴史を誇る。
「リングリング・ブラザーズ…か。子どもの頃、サーカスの象たちが街をパレードするのを見に、親が連れていってくれたよ。列車を降りて、マジソンスクエアまで歩いていくんだ」。
席を譲ってくれた彼は、おばあさんと話していたから、私がサーカスに行くことをおじいさんから聞いて初めて知る。
「サーカス?! サーカス、しばらく観てねぇなあ。いつまでやってんだ?」と懐かしそう。
「明日で終わりよ」
「なんだなんだ。リングリング・ブラザーズ…じゃねぇだろうな」
「そうよ」
「ええ、マジで? リングリング・ブラザーズ…なのか? それ、子どもん時、マジソンスクエアに見に連れてってもらったよ。今度、いつ来るんだよ?」
「わからないわ。明日、見れば?」
「明日は行けねえんだよ」
サーカスは子どもの頃、私も連れて行ってもらったけれど、アメリカ人もサーカスの話になると、おじいちゃんも、ろれつが回らないこの人も、子どものように目を輝かせている。
老夫婦が先に降り、彼と私は話し続けていた。
ろれつが回らないこの男性の年を私がぴったりあてたら、I owe you beer.(今度、ビールおごるよ) It was good meeting you. と言って、降りて行った。
もう二度と会うこともないだろうから、ビールをおごってもらうこともないだろう。
彼が去り、そばに立っていた黒人の男の人が、その席にすわったとたん、I’m glad he’s gone.と私につぶやく。
どうして?
Why? He talks too much!
だって。しゃべりすぎだろ、あいつ。
その黒人の男性も、一緒にいた息子と、サーカスについて大きな声で目を輝かせて話し始めた。
さっきの男の人と、同じじゃない?

注)このサーカス団は、目玉演目のゾウのショーを来年までに中止すると発表しています。

★6/4(土)青山学院大学の記念礼拝堂で話します。事前にお振込みいただく必要があります。お早めに♡。詳細はこちら☟

6/4(土) 青山学院講堂で講演します。その後、読者親睦会があります。

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