大坂なおみ選手の I”m sorry. の意味

昨日、ブログに私はこう書いた。

I’m sorry. I know that everyone was cheering for her and I’m sorry it had to end like this.

ニューヨークで行われているUS Open の決勝戦で、憧れのセリーナ・ウィリアムズ選手と戦い、優勝した大坂なおみ選手の、表彰式での言葉。このsorry、大坂選手のあの時の様子を見ていると、残念です、というより、ごめんなさい、という気持ちだったのだろうと、私は思います。

 

sorryには「申し訳なく思う」の意のほかに、「残念に思う」、「気の毒に思う」、「遺憾とする」などの意味がある。

大坂選手は、こんな結果に終わって「残念です」という意味でsorryという言葉を使ったのであって、日本のメディアが「すみません」、「ごめんなさい」と訳しているのは間違いだ、と主張する人が、アメリカで生まれ、また長く暮らす日本人のなかにもいた。私はあの時の動画を何度か観てみたが、やはりそうは思えない。

最初のI’m sorry.は「今の質問とは違うことを答えたいと思いますが」と、そのことに対してすみません、と詫びていて、質問した相手もNo problem.と答えている。その次のI’m sorry…はやはり、いたたまれなくなって、「すみません=ごめんなさい」と答えたのだろうと思う。

その前に、全米テニス協会(USTA)のカトリーナ・アダムズ会長が、「私たちが求めていた結果ではなかったかもしれません。でも。セリーナ、あなたはチャンピオン中のチャンピオンです」と言っている。

そのあとで今度はウィリアムズ選手が観客に向かって、「みんなが求めていた結果ではありませんでした。でもこの瞬間をベストなものにしましょう。前向きにこれを乗り越えましょう」と呼びかけているのだ。

優勝した大坂選手は、こんな雰囲気のなかで、いったい何を言えばいいのだろう。ブーイングは大坂選手に対するものではなく、審判の判断に対するものが多かったはずだ。それでも観客の多くは、ウィリアムズ選手の優勝を願っていたことを、大坂選手はわかっている。

ヒーローとして憧れ、慕い続けてきたウィリアムズ選手の夢を、そして目の前にいるウィリアムズ選手の多くのファンの夢を、奪ってしまった、という思いになったに違いない。全米テニス協会の会長にまであのように言われたら、四面楚歌の状態だ。回りにいるのは自分の勝利を願っていない人たちばかり、といたたまれなくなったのだろう。

実際、そのあとの記者会見で、ある記者が「なぜ謝る必要があると感じたのですか」と質問し、大坂選手はそれを否定することなく、「あなたの質問には、感情的になってしまいます」と言って、涙しながら次のように答えている。

Q. Why did you feel like you needed to apologize for doing what you set out to do?

NAOMI OSAKA: Your question is making me emotional (tearing up).

Okay, because I know that, like, she really wanted to have the 24th Grand Slam, right? Everyone knows this. It’s on the commercials, it’s everywhere. Like, when I step onto the court, I feel like a different person, right? I’m not a Serena fan. I’m just a tennis player playing another tennis player.

But then when I hugged her at the net (tearing up)…

Anyway, when I hugged her at the net, I felt like a little kid again.

 

「ニューヨークタイムズ」紙や「ニューヨーカー」誌などアメリカやイギリスの主要な新聞や雑誌でも、大坂選手は自分が勝ったことをapologize(詫びた)と報道している。ツイッターなどを見てもそう受け取った人は、アメリカなどの英語圏でも多い。

大坂選手は、日本人の血が流れているなぁと強く感じた。自分が勝ったことを詫びるのではなく、堂々としていてほしかったと感じた日本人もいるようだが、今回の大坂選手の言動が、世界中の多くの人たちの心を鷲掴みにしたのは、間違いないようだ。

 

☕️「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫、第1弾〜第8弾まで)。世界一お節介で、図々しくて、孤独な人たち。でも、泣きたくなるほど、温かい。たった一度のあなたの人生を、もっと肩の力を抜いて生きていこう、と思うはず。どの話にもニューヨークでよく耳にする英語がちょっとだけ入っていて、ほっこりしながら英語も学べます。シリーズのどの本から読んでも楽しめます。シリーズはすべて、普通の文庫(紙)もKindleもあります。内容はAmazonでどうぞ。下のチラシをクリックすると、飛びます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください