風邪のために週末の予定をキャンセル。でも、ゲイル(「ニューヨークの魔法」シリーズの登場人物です)が、チキンスープと風邪薬を届けてくれた。
「薬は症状を抑えるだけだから、いらないわよ」と伝えたのだけれど、「薬を飲んだって飲まなくたって、1週間だか10日だか、ウイルスに感染してるんでしょ。だったら、その間、咳だの鼻水だの、辛い思いすることないでしょ、というのが私の考えよ」と、買ってきてくれた。
やってきたゲイルと話し込み、気づいたら2時間以上、おしゃべりしていた。彼女は話し出すと止まらないのだ。
その前にドラッグストアに立ち寄ったゲイルから電話があって、「薬剤師からの質問なんだけど、ミツヨは高血圧?」と聞く。違うわよ、と答えた。が、彼女が買ってきた薬の箱には、COLD RELIEF for people with HIGH BLOOD PRESSUREと書かれている。どうして? 「わからないわ。私も薬剤師に聞こうと思ったんだけど、症状を伝えたら、これを渡されたから、いいんじゃないの?」とゲイル。
心配になったので、ゲイルが帰ってから、ドラッグストアに電話してみた。Coricidinなんて薦めた覚えはないわ、となまりの強い英語で薬剤師が答える。「でも、確かに薬剤師に薦められたって…」と私。「ねえ、あんた、Coricidinを誰かに薦めた?」と電話の向こうでもう一人の薬剤師に聞いている。「いいや」と男の声で返事が返ってくる。「誰もCoricidinなんて薦めてないわよ」と彼女。
「でも確かに、友達は…。午後5時にそこにいた薬剤師は、あなたたち2人だけなの?」と聞く。レシートに5:07PMと時間が書かれている。
「そうよ、私たち2人だけ。ほかに誰もいないわ。あのね、1日100人以上の人に薬を渡してんのよ。いちいち、覚えてらんないわよ」と薬剤師。
そして、ちょっと待っててよ、と言うと、しばらくしてから電話口に戻ってきた。その薬を持ってきたらしく、「成分をチェックしたら、それでよかったのよ。ほら、箱の裏に3つの成分が書いてあるでしょ。そうそう、私だわ。Coricidinを渡したのは。思い出したわ。咳と鼻と喉の痛みを抑えるのは、これでいいのよ」と薬剤師が答える。
それなら、なぜわざわざ、「高血圧の人のための風邪薬」と書かれているのか。『ニューヨークの魔法のさんぽ』(文春文庫)のエッセイ「薬剤師を疑え」の「穴の数」の事件以来、薬剤師には不安を覚えてしまう。
チキンスープはチャイニーズだという。最近、気に入って、よく買っているのよ、とゲイル。「ヌードルがいっぱい入っているんだけど、やけに長いのよ。長すぎるから、食べる前に細かく切ったほうがいいわよ」
そうそう、アメリカ人はヌードルを細かく切って食べるよね。
お箸があるから、長いままでも大丈夫、と私。
ゲイルはよく意味がわからないようだが、風邪のため、説明するのも面倒なので、放っておく。
「それと、ミツヨの好きなシーウィード(海藻)が入ってるわよ」
ゲイル、海藻を食べるようになったの? 『ニューヨークのとけない魔法』に出てくるゲイルは、Seaweed!? No, thank you.と散々、言っていたのに? しかし、よく見てみると、チンゲン菜?
Oh, it that it? Whatever.(え、そうなの? ま、なんでもいいわよ)とゲイル。
ゲイル、ありがとう。ゲイルのおかげで、風邪がよくなりますように。
『ニューヨークの魔法のさんぽ』、ぜひ読んでみてください。「薬剤師を疑え」、かなり恥ずかしい話で、読売新聞社の上司は「これを本に載せるのか?!」と驚いたけれど、載せちゃいました!
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