あのミネアポリスで、あの事件が起きた。

9分間も白人警官にひざで体重をかけて首を押さえつけられ、「息ができない!(I can’t breathe.)と何度も訴えながら、黒人男性が殺された。許しがたい事件が起きた。9分間も首を絞め続けるという行為が、正気の人にできるのか。そして、それをそばでただ見ている他の警官たち。

ミネソタ州ミネアポリスは、私が高校時代に留学したウィスコンシン州の街に戻る時に、いつもニューヨークから飛ぶ街。知り合いも多い。ミネソタ・ナイスという言葉がある、そんな紳士的なはずの街。

そして、ミネアポリスだけでなく、ニューヨークを含む全米の都市で抗議デモが起きている。過激な暴動はごく一部のようだけれど、報道されるのは、そういうシーンばかり。

映像を見ていると、まるで映画「ジョーカー」のよう。1992年の暴動を思い出す。

その頃、私はYomiuri Americaを退職し、フリーでそこで記事を書いていた。リンカーントンネルが燃えている。ペンシルベニア駅で死者が出た、地下鉄の乗るのは自殺行為だ」と、さまざまな情報が飛び交い、私たちは帰宅するように言われた。

地下鉄が走っているかどうかわからなかったが、地下鉄では逃げ場がない。バスなら飛び出せる。なんとかバスに乗り込み、帰った時のことを、『ニューヨークの魔法は続く』の「暴動のうわさ」で書いた。乗り込むことはできたものの、ずっとステップのところに立ったまま、フロントガラスに顔を付け、ずっと身動きできずにいた(コメント欄に画像あり)。

この事件はもちろん、許されることではない。ただ、人種差別は悪い!と非難する私たちに、差別意識はないのか。ニューヨークの地下鉄で、日本人の子どもが黒人のそばにすわった時、黒人が降りると、「お前、ポケットの中のもの、盗まれてないか」と友だちが聞いた話を『ニューヨーク日本人教育事情』(岩波新書)に書いた。子どもたちはこの差別意識を、どうやって身につけるのか。

事件が起きたミネアポリスの郊外は、こんなのどかな光景が広がっています。

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