滑走路に損傷なし。離陸してくださいーー。
それが彼の最後の通信だったという。
インドネシアのスラウェシ島で大地震が起きた。同僚たちが次々に避難するなか、アグンさんはひとり、激しく揺れる空港の管制塔に残り、無事に離陸させるために管制を続けた。
この直後、崩壊寸前の管制塔から飛び降り、その下敷きになって亡くなった。アグンさんの棺は遺族の希望で、空路で搬送されたという。
早く高台に避難してくださいーー。
東日本大震災では宮城県南三陸町の遠藤未希さんが、防災無線で町民に避難を呼びかけ続けて、津波の犠牲になった。
インドネシアでは死者が1200人以上に達し、伝染病予防のために身元がほとんどわからないまま埋葬が始まったという。
東日本大震災の時、ニューヨークのメキシコ出身のドアマンが、ほほ笑みながら、こう言ったことを思い出す。
どこかの国が困っていると、世界中が助け合う。すばらしいよな。今は日本の番だけど、メキシコも前に、世界中の人に助けてもらったんだーー(『ニューヨークの魔法のさんぽ』)。
インドネシアは東日本大震災で、1億6千万円の義援金と15人の救助隊を送り、日本を助けてくれた。
写真はずいぶん前に訪れたインドネシア。
祈りに満ちている、と感じた国だった。
(Photos: バリ島、最後の夕日はクタで撮影)。