ロックとビールとフィンランドのやさしい人たち

My first day in Helsinki, Finland–I met 2 Finish women while I was waiting for a tram. They said I could join them. So I did!

夫と別れ、ひとりで舞い降りたヘルシンキ。ホテルに到着したのは、土曜日午後6時頃。土曜日は店の多くが午後4時か5時には閉まってしまう。教会や美術館も開いていない。トラムに乗って街を巡ってみたものの、人がほとんど歩いていない。「人々はいったいどこにいるの？」と道ですれ違ったヘルシンキ在住の若い女性に尋ねると、「4時にはお店も閉まっちゃうから、みんな家に帰るのよ」と。「だって週末の夜よ」と驚くと、「奇妙かもしれないけれど、そうなのよ」と答える。そんなことってある？
乗り放題のパスを買ったから、行く当てもないのに、トラムに乗る。夫が恋しく、寂しくなってきた。やっぱりふたりの旅は楽しかった。

一緒にトラムを待っていた女性ふたり連れに、「ねぇ、人々はいったいどこにいるの？」と同じ質問をすると、「中央駅の辺りのレストランには人がいるわよ。私たちはこれから飲みながらロックを聴きに行くんだけど、よかったら一緒にどうぞ」と言う。連れの女性もうなずいている。

会場はボート。ステージで歌うという男友達に紹介され、「あなたの友達とトラムで出会って、たった今、友達になったばかりのミツヨよ」と自己紹介する。
「私にビールを払わせて。そうしたいの」と大きなグラスに入ったビールをご馳走してくれた。友達たちに紹介され、おしゃべりしていると、いつの間にか今度は連れの女性が3人分のドリンクをトレイに載せてやってきた。
出会ったばかりなのに、皆、とっても気さく。私の肩に腕を回し、ハグし、手を取って一緒に踊ろうと誘い、ある女性は私の頬に愛おしそうに口づけした。

飲んで踊って、気がつくと夜中の1時20分。誘ってくれた女性2人はまだ踊っていたので、別れを告げて私だけ先に出ようとすると、出口で一緒になった人たちが、トラムはもう走ってないよ、と言う。
君さえよければ、僕たちがホテルまで送っていくよ、と男性が言う。彼らは男女のカップル2組だった。踊っていた時も、彼らとは話した記憶はないけれど、なんだかみんな、仲間のような気になっていた。長身の女性ふたりと男性ひとりが後部座席に窮屈そうに座り、ゆったりとした助手席を私に譲ってくれる。

「日本人はフィンランド人とはとてもよく似ているんだよね。同じように他人に心を開いて親切で、いい人たちなんだ」「私も中国より日本に行きたいわ」と口々に日本を称賛する。

翌朝、ホテルの朝食で出会った感じのいい日本人女性ふたりに、昨晩の出来事を話した。「まあ！　知らない人を信用して、車に乗せてもらうなんて！　気をつけてくださいよ」と驚かれた。そうですね。運が悪かったら、どんなことになっているかわからないけれど、私はこれまでこういうことが山ほどあった。皆さんはくれぐれも気をつけてくださいね。でも、たいていの人はいい人だ、ということですね。

やさしい人たちのお陰で、沈みかけていた気持ちが吹っ飛び、フィンランドに来てよかった！　と心から思った。

この写真左手がトラムで出会ったふたり。私が首を絞めているみたいに見える人は、大学時代に留学していたオハイオ州でアドバイザーだった教授にそっくり！　この教授とは今も親しくしている。教授はヘルシンキからフェリーで2時間くらいのエストニア・タリンの出身。彼女に似ている人がヘルシンキの町中にいて、なんだか嬉しくなる。私の頬に突然、キスしたのは、向かって右手の女性（だったはず）。

岡田光世　/ Mitsuyo Okada