イヴの礼拝のあと、参加者たちとともに近くの病院へ移動し、寒空の下、その前に立って賛美歌を歌った。
歌声が届いたのだろう、病室の窓にひとり、ふたり、と人影が見え始めた。
賛美歌を歌い終わってしばらくして、私は初めて知った。今、一緒に歌っていた人のなかに、何年か前には、窓の向こうで、賛美歌を聞いていた人がいたことを。
あの病室で、息子とふたりで。でも、そのとき、息子はもう意識がなかった。そして、まもなく、息子は息を引き取った。
それからその女性は、クリスマスイブには必ず、ここに立ち、病室の窓に向かって、賛美歌を歌っているという。
窓の向こうには、あの日の息子の姿が見えるのだろう。そして、この特別な夜を、窓の向こうで過ごしている人たちに、今は亡き息子の姿を重ねているのだろう。
きよしこのよる 星はひかり
すくいのみ子は まぶねのなかに
ねむりたもう いとやすく――。
岡田 光世 / Mitsuyo Okada