長いです(また?)。六本木の東京ミッドタウンのスタバでの出来事を半月前に徒然なるままに書いたので、アップします。
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では、徒然なるままに…
六本木の東京ミッドタウンのスタバで、元編集者を待っていた。 ひとりでコーヒーを飲みながら、大好きなドーナツをほおばっていると、三十歳くらいの白人女性が隣のテーブルに近づいてきて、ベビーカーを押して椅子をずらし、そこにベビーカーを止めようとしている。私が手を差し伸べ、椅子をこちら側に引き寄せて場所を作ると、Thank you.とほほ笑んだ。
東京に住んでいるの? と聞くと、そうよ、と答える。赤坂に住んでいるという。
その女性はブラジル出身で、日本に住み始めて3年五5か月になる。
あなたは? と聞くので、日本人よ、と答えると、そうなの? と意外そうな顔をした。
ぷっくらとした両足をくの字に向き合うように開き、生後3か月の男の子がベビーカーで眠っている。
アルゼンチンに負けてしまって残念ね、と言ってから、慌てて、ドイツだったわね、と訂正した。対ドイツ戦は、1対7と惨敗したのだ。 女性はうなずいた。
決勝戦は、アルゼンチンがドイツに負けたんだったわね。 そうよ。アルゼンチンが負けて、嬉しいわ。 やっぱり、そうなのか。ブラジルとアルゼンチンは宿命のライバルだから、アルゼンチンには勝ってほしくないのだ。
ブラジルではみんなそう思っているのかしら。 当たり前よ。
日本は惨敗だったけれど、日本人は代表チームを責めることもしないで、みんな「ありがとう」と、健闘したことに感謝の気持ちを表している。ブラジル人は代表チームに怒りをぶつけている。でも、それがチームを成長させるのであって、日本人は甘すぎると批判する人もいるわ、と私が言った。
女性は首を傾げる。 ブラジルのサッカーは、質が落ちてきている。それが大きな問題よ。
理由は? 選手の育成に十分なお金をかけていないからだと思うわ。 ワールドカップどころじゃないって、デモも起きていたわよね。 そう。教育なんかにもっとお金をかけろ、ってね。
女性の夫は、チキンや豚肉などを販売する会社に勤めているという。 11月にブラジルに帰国するという。
早くブラジルに帰りたい? 帰りたいわ。
ブラジルの何が恋しい? 食べ物? 食べ物もそうだけど、家族ね。日本の食べ物は、何でも美味しいもの。
日本人はあまり他人と話さないでしょう? 話さないわね。だから、あなたは本当に日本人なの? って、さっき、聞いたのよ。
そういうの、さびしいな、と思う? そうね。ブラジル人は知らない人とでもよくしゃべるもの。最初はとてもさびしかったけれど、でもだんだん慣れたわ。外国人の友だちができて、彼らはよくおしゃべりするし。
ブラジルと日本の文化の違いで、戸惑ったことってある? それはもう、ありすぎるわ。
そこへ元編集者が登場したので、ふたりを紹介し合い、ブラジル人との会話はそこで終わった。文化の違いを聞いておけばよかった。 長くなるので(もうすでに長いでしょ、オカダサン)、元編集者との話は別の機会に書くとして……。
元編集者と乃木坂まで歩き、やはりさっきのスタバで少し仕事をしようと思い、ひとりで引き返した。今度は店の中央にある大きなテーブルにすわった。
こういう大きな厚い木のテーブルがある店が好きだ。そこに他人同士が、一緒にすわっているのがいい。神保町のカフェ、古瀬戸もそうだ。
私がパソコンに向かっていると、前からケタケタと若い女性たちの笑い声が聞こえてくる。 顔を上げると、私の前に20代だろうか、女性ふたり連れがすわっていた。私の真ん前の女性が、とても背の高い大きなカップ(おそらくベンティサイズ)から、ティーバッグをふたつ引っ張り上げようといているが、量が多すぎてテーブルの上に紅茶があふれ、テーブルの上にこぼれた。
その女性が立ち上がったので、おそらくナプキンを取りに行くのだろうと思った。 私のマグカップの下に、使っていないきれいなナプキンがあるのに気づいたので、これ、使いますか、とさっと差し出した。 あ、ありがとうございます、とその女性はちょっと申し訳なさそうに礼を言うと、お辞儀しながらナプキンを受け取った。三人でほほ笑み合う。
一時間ほど仕事をし、パソコンやアイフォンをバッグの中にしまい、立ち去ろうとしたとき、前にすわっている女性が、声をかけてきた。 さっきはありがとうございました。 私がうなずきながら、どういたしまして、という思いを込めて笑顔を返すと、その人も笑顔を向けた。
ニューヨークで私が同じように飲み物をこぼしたら、さっとナプキンを差し出してくれる人がいるだろう。ほんのささいなことだ。ニューヨークの人がしてくれることを、日本で私がして、この女性が笑顔を返してくれた。
ほんのささいなことだけど、ドアに向かって歩きながら、ここのスタバはこんなに夜の明かりが美しかったのだ、と思った。
: : 『ニューヨークを探して』(大和書房)の「土曜日の朝のカフェ」に、マンハッタンのZabar’s Cafeで朝食を取ったときに目にした、ちょっとした触れ合いが描かれています。編集者が、これすべて、本当にひと朝で起きたことなんですか、と驚いたので、その時に取った証拠のメモを見せてあげました。
詳細はこちらです。http://goo.gl/P31xVu
岡田 光世 / Okada Mitsuyo