We went for a sail. A friend of ours from high school has his own yacht. — Miura Peninsula, Japan.
ニューヨークのサラとビルのアパートメントの大きな窓から、ハドソン川に浮かぶ自由の女神が見える。天気のいい週末は、目の前をヨットがゆったりと行き来する。
こんな気持ちのよい日に、部屋で執筆? 神様がくれた最高のプレゼントではないか。そうだ、フェリーに乗ろう。自著『ニューヨークの魔法のさんぽ』(あの日の散歩道)でそう綴ったけれど、今回は、そうだ、ヨットに乗ろう。が、実現するなんて。それもNYではなく、神奈川県三浦半島の油壷で。
印税でヨットを買った。と書けたらかっこいいけれど、ヨットを持っているのは、高校の同期生。夫も私も、彼と同じクラスになったことはなく、当時は言葉を交わした記憶もないけれど、先日、あの頃の仲間たちの集いで偶然、同じテーブルになり、夫婦でセーリングに誘ってくれた。
波は穏やかで、風が適度にあり、理想的な天候だったという。ヨットが湾から広い海に向かって進んでいくときの、爽快感はたまらない。モーターで外洋へ出ると、いよいよ真っ青な空に向かって帆を上げる。
しばらくセーリングを楽しんでから、海の真ん中で錨を下して、ビールやワインを飲みながらランチ。周りを緑で囲まれ、蝉のさえずりが聞こえる。食事のあとは、ヨットから飛び降り、ぷかぷかとただ海に浮いている。そのまま、眠ってしまいそうな気持ちよさだ。
あっという間に一日は終わり、錨を上げて、湾に戻る。 外洋が荒れていても、ここに戻れば水は穏やか。まさに母なる湾という感じがするんだ、と友人。
一緒に参加した人も、初対面だったけれど、気持ちのよいふたり。女性はFBで友達になっていた読者の人で、お互いにびっくり。読者と知ったとたん、なぜか穴があったら入りたい心境に。
こんなことで、12月の講演会はどうなるんだ? 読者が来てくれたら、穴に入ってしまうかも。
男性は友人の指示に従い、クルーとしててきぱきと帆の向きを変えたり、錨を下したりしている。自分の生き方をしっかり持っていて、彼が目指す「かっこいい昭和の男」そのもの。
「かっこいい昭和の男」は、何事にも真剣勝負で望むという。彼はヨットを操る友人を見ていて、「かっこいい」と思ったそうだ。 ふたりとも、本当にかっこよかった(手伝いもせずに、ごろごろ寝ていた男は、だれ? あ、うちの夫か)。
今日は波が高いのか、友人はヨットではなく海水浴を楽しむという。
今日の私ーー。そうだ、ヨットに乗ろう、ではなく、そうだ、本を書こう。 そうだ、などと呑気なことを言っている場合ではない。今月中に新刊の草稿を書き終える予定だった。あと5日。 二日酔いで頭はガンガンだけど、昨日の楽しい時間を思い出しながら、「かっこいい昭和の女」になろうではないか。
岡田 光世 / Okada Mitsuyo