はじめに
Nine Ninety-Nine の話(65話)を読み返しながら、もう何年も前に友人の Rosemary が笑いながら電話してきたことを懐かしく思い出しました。
彼女はちょうど私の母親と同じくらいの年齢で、その頃、小学生だった孫の男の子と一緒に骨董市をひやかしていました。
その子が「ミツヨにちょうどいい机が見つかったよ!」と目を輝かせて走ってきたといいます。少し前に、木の机を探していると Rosemary に話をしたのを、その子は覚えていたのでしょう。
「お店のおじさん、9ドル99セントだって言ってたよ! ミツヨ、喜ぶよ!」
Rosemary がそこへ行ってみると、木の机は確かに Nine Ninety-Nine でした、が、9ドル99セントではなく、999ドルだったというのです。
Rosemary は同時多発テロの翌月、癌で亡くなりました。生きていたら、Nine Ninety-Nine がこの本の副題になったことを、喜んでくれたでしょう。
本書は「奥さまはニューヨーカー」シリーズ第四弾です(第一弾は黄色い表紙。第二弾は赤い表紙。第三弾は白い表紙)。突然、ニューヨークに転勤になった山田一家のドタバタな日々を、マンガで描いています。
一話二ページの読み切りなので、第四弾のこの本から読み始めても大丈夫です。毎回、次のページのKEY EXPRESSION で、漫画に出てくる英語表現を一つ紹介し、わかりやすく解説しています。
第一弾「奥さまはニューヨーカー」では、主人公のスージー(山田静江)が娘のケイト(毛糸)を出産したり、英語で講演して日本のイメージをぶち壊したリ・・・。長男のチャーチル(茶散)は学校でメロディに思いを寄せ、夫のテリー(照夫)は、日本語を勉強中の同僚エリックと競い合い助け合い、奮闘します。
第二弾では転校生・日ノ本愛やお金持ちで礼儀正しい韓国人のヤンスーが加わり、茶散とメロディの仲は面倒なことに・・・。テリーの甥・赤門学が山田家に居候し、アメリカの高校に通い始めます。プライドが高くてデリカシーに欠けるけれど、どこか憎めないガリ勉君です。
第三弾からは学の個性がさらに際立ち、山田家での存在感もぐっと増します。新たに加わった根倉田一家は、何事もマイナス志向で臆病なので、山田家ともトラブル続きです。
本書では、山田家の思い込みの激しさも、根倉田家の被害妄想ぶりも絶好調。学は念願のハーバード大で寮生活を始めます。品がなく自己チューの学は、育ちのいいルームメートのひんしゅくを買ってばかり・・・。アメリカ生まれの毛糸は、英語力がバッチリと思いきや・・・。
まずは、マンガを楽しんでください。次は英語表現に注意して読んでみましょう。さらに登場人物になり切って、セリフを声に出して言ってみましょう。そして、いつか実際に使ってみて、伝える喜びを味わってください。笑ってマンガを読んでいるうちに、英語を覚えてしまう欲張りな本です。
この本の値段は、米ドル建てで Five Fifty-Five (5ドル55セント)ほど。
中味はもちろん、Five Fifty-Five(555ドル)です。
二〇〇九年五月二十八日
原作者 岡田 光世