転勤で突然ニューヨークに引っ越した一家が、慣れない英語と異文化に戸惑い失敗を繰り返しながらも、果敢に英語にチャレンジする、ドタバタ日常をコミカルに描いた爆笑失笑快笑マンガ。日本語訳が付いた英語のセリフには、NYで耳にする表現を満載。わかりやすい解説付き。思わず英語で話しかけたくなる、ロングセラー英語学習マンガの文庫化。
はじめに
不安な思いで初めてアメリカの地に立った時、私はまだ十七歳の高校生でした。家族の強い反対を押し切って、一年間、留学する決心をしました。日本で外国人教師による英会話の授業も受けていたので、英語にはちょっぴり地震があったのですが・・・。
中西部の小さな空港に降り立ったとたん、目に入る文字はすべてエイゴ。周りはみな、ガイジン・・・。アメリカ人の早口英語をまったく聞き取れないばかりか、私の英語も通じないことに愕然としました。
とんでもないところへ来てしまった! 不安でいっぱいで、夜になれば日本に帰りたいと泣いてばかりいた私は、ある日、同級生のアメリカ人から一枚の紙をそっと手渡されました。そこには彼女の丁寧な手書きの文字で、ホストファミリーや同級生たちがふだんよく使っているスラングが並んでいました。
それから一年間、たった一枚のその紙が、私のバイブルとなりました。
今も大切にとってあるあの紙切れに代わるものを、本書の読者に届けられたら、という思いが私の中にあります。
その後、三度目の渡米でニューヨークに住み始めて、二十余年。この街で耳にする日常会話が、本書には満載されています。英語表現をたくさん知っていても、どういうシチュエーションでどのように使えばよいのかわからなければ、意味がありません。その点は、本書は漫画なので、セリフが絵とともに頭に入り、記憶にも強く残ります。
主人公はスージー(山田静江)。夫のテリー(照夫)の転勤で、突然、ニューヨークに住むことになります。小学生の息子のチャーチル(茶散)のほか、ニューヨークで生まれる娘ケイト(毛糸)も家族に加わり、場面は近状づきい、学校、職場などさまざま。言葉や文化の違いから生まれる戸惑いや不安、出会いの喜びなど、まさに私自身も体験したアメリカ生活が、一話二ページに凝縮されています。
KEY EXPRESSION では、その前の漫画に出てくる表現を一つ取り上げ、解説します。「おまけでーす」は、それ以外の表現の解説です。
まずはストーリーを楽しんでください。次は英語表現を意識して、読んでみてください。とくに声に出して読むことをお薦めします。本書にはNY直輸入の役立つ表現がたくさん出てきます。登場人物になりきって、セリフを繰り返し声に出すうちに、自然に耳で覚え、いつしか自分の口から英語が出てくるようになります。そして、あなたもきっと、ここに出てくるフレーズを使って、思わず話しかけたくなるでしょう。
さあ、まもなく、飛行機がジョン・F・ケネディ国際空港に到着します。
二〇〇八年十月五日
大好きなニューヨークへの思いを込めて
原作者 岡田 光世