仏ニースのカフェで、ひと口の思い出

W杯の日本対セネガル戦、素晴らしい試合だったのですね! フランスで見逃してしまい、とっても悔しい! 日本列島がわいていたことでしょう! 対ポーランド戦は何が何でも観戦します! フランスのカフェで観られますように!

今回は、数日前に行われたフランス対ペルー戦をカフェのスクリーンで見かけた時のお話をーー。

数日前にコルシカ島からフェリーでニースへ。この日はフランス対ペルー戦。旧市街のサレヤ広場のカフェは、スクリーンで観戦する人たちで、ごった返していた。カフェでビールなどを注文しない人も、どこかでひとパックビールを買ってきた人も、一緒になってカフェの前でフランスを応援している。試合はもうあと15分ほどで、ロスタイムになろうとしていた。フランスが2対1でリードしていた。

カフェの間の通路を私がかがんで通っていると、微笑みながら青年が声をかけてきた。

君はちっちゃいんだから、そんなふうにしなくたって大丈夫だよ、とフランス語で繰り返しているようだ。Petit と何度も言っている。

その少し先で、地面にしゃがみ込んで観戦していた若者の隣にすわれるスペースがあったので、しゃが込む。

話していると、その前にすわっていた10代後半くらいのフランス人の女の子が、英語でハーイと声をかけてきた。その女の子は私たちの会話に加わっていたわけではないのだけれど、目が合うと微笑んでくれた。

そして、しばらくすると振り向いて、自分が飲んでいたコーラの瓶を、私に差し出して、飲む? と英語で聞く。瓶にはストローが差してあった。

え? とためらう私に、どうぞ、とすすめる。

え、これをひと口もらっていいってこと?

と、私とそれまで話していた青年が、飲めばいいんだよ、とコーラ瓶をぐいと引っ張って、私に突き出す。

見も知らぬ私が口をつけて、嫌ではないのかしら。そういえばアメリカのウィスコンシン州の高校に留学した時、みんなでひとつの飲み物を回し飲みしていたな、などと思いながら、遠慮がちにひと口飲ませてもらったコーラの冷えて美味しかったこと。

美味しかった、ありがとう。
そう言いながら、コーラを返すと、彼女も嬉しそうに笑った。

暑いからね、と女の子が言った。

その日、着いたばかりのニースも、コルシカ島に負けないくらい、太陽がギラギラと暑かった。見も知らぬ私が暑いと思って、自分のコーラをおすそ分けしてくれたのだ。

コーラをくれたのは、この写真の赤いスカートの女の子です。

【お知らせ】以前、コメント欄に書きましたが、ここ数年、6月に企画されていた親睦会は、私が日本におりませんので、今年はありません。恒例の12月の講演会は、次回は時期を変えて4月頃を予定しています。それに合わせて、「ニューヨークの魔法」シリーズの新刊、刊行予定です。そしてもうひとつ。嬉しいニュースがありますが、それはまた後日、正式に決まりましたら、お知らせいたしますね。

🍷「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫、第1弾〜第8弾まで)ー世界一お節介で、図々しくて、孤独な人たち。でも、泣きたくなるほど、温かい。たった一度のあなたの人生を、もっと肩の力を抜いて生きていこう、と思うはず。どの本からでも楽しめます。シリーズはすべて、普通の文庫(紙)もKindleもあります。内容はAmazonでどうぞ。下のチラシをクリックすると、アマゾンに飛びます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください