マンハッタンで、長い壁一面に絵が描かれた写真を撮っていると、ふたりの若者がこちらに向かって歩いてきた。
「これ、誰が書いたか知ってる?」と声をかけると、「知らないけど、すごくいいでしょ?」とひとりが答える。

私が立ち去りながら振り返ると、ふたりは壁の上に乗り、すわっていた。いい写真になりそうだなと思った。私は彼らのところに戻り、「書いている本に写真を使うことがあって、使うかどうかわからないけれど、撮ってもいい?」と聞いてみた。

「もちろん、いいよ! どこの国から来たの?」
「日本よ」
「日本!? 日本に行ってみたいなぁ。すっごいクールな交差点があるんだよね。タイムズスクエアみたいだけど、ネオンサインがもっといっぱいあって、もっとかっこいいやつ」
渋谷のスクランブル交差点のことだろう。
「ねぇ、君、いくつなの?」とひとりが私に聞き、ふたりで「34歳?」、「27歳かな?」などと言っている。
私は笑いながら、それには答えずにいると、「え、40歳、ってことはないよね?」と言っている。

写真を何枚か、撮る。
「本を書いてるの? 僕たちのこと、書いてよ。ニューヨーク・キッズのこと!」
「じゃあ、話を聞くから、下に降りてきて」
そう言うと、ふたりはすぐに、するりと地面に降りてきた。
そのあと1時間半ほど、私はふたりの話を聞くことになったのだが、この若さにして、壮絶な人生だった。(続く…)