パディントン・ベアと母と映画

 何年か前にロンドンのパディントン駅で、母のためにパディントン・ベアのぬいぐるみを買った。お土産を買ってきたよと渡すと、「硬いから抱けない」「部屋に置いておくと、夜、気持ち悪い」と言った。重いのをせっかく持ってきたのに、がっかりした。

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今月、一週間ほど、叔母(母の妹)が泊まりに来ていた。そのパディングトン・ベアを見ながら、母が叔母に、「これ、ホント、かわいいよね。バッグ、持ってるのが、かわいいじゃんね」と言っているのを聞いた。
うれしかったので、「このクマの映画をやるけれど、見に行きたい?」と聞いた。
「映画? 別にどっちでもいい」と言い、「英語なの? 英語じゃ、イヤだ」と付け加えた。

母のために映画のチケットを買い、一緒に行こうと誘った。今朝、ちょっとしたことで口論になり、母は「映画は絶対に行かないから」と何度も言い張った。午前中は教会に行ったけれど、せっかく午後を空けておいたのに。
「お互いに気分を直して、一緒に行こうよ」となだめた。
母はようやく黙った。ということは、「アンタなんかと行きたくないけど、行ってやってもいい」という意味だ。

DSCF4383 映画館で座席にすわったとたんに、母はこっくりこっくり、居眠りし出した。映画が始まり、10回ほど起こし、時々、耳元で小さな声で、そこまでの話をごく手短に伝えた。全体の3分の2は寝ていただろう。
めったに映画に行かない母は、映画館でポップコーンを売っていることに驚き、それを食べたり飲んだりしながら、みんなが映画を見ていることに驚き、せっかちな母は映画が終わったとたんに立ちあがったのに、ほとんどの人がエンドロールが終わるまでずっとすわっていることに驚き、「どうしてみんな、帰らないの?」と何度も聞いていた。
普通のポップコーンは塩辛い、キャラメルのポップコーンは甘い、と顔をしかめていたけれど、Lサイズをふたりで食べ切った。
@DSC_0506 映画が終わり、渋谷の街を歩き始めると、「まったく人が多くてせわしない」とぶやいた。しばらくすると、「あのトウモロコシのあれ、なんだっけ、あれ、美味しかった」とぽつりと言った。
ほとんど寝ていたのに、母は映画の筋をちゃんと理解していた。
センター入試の監督を終えた夫と合流し、3人で渋谷で焼き鳥を食べる。
母とふたりで映画を見た記憶が、私にはない。だから、今日は記念すべき一日。

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The last 2 photos @ Paddington Station 最後の2枚はパディントン駅で撮影

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