ときには誰かが思い切って、始めてみなければね

今、ニューヨークにいます。通りを歩いていると、白人の男の人が、小さなピンク色のキャラクター入りのバックパックを背中にしょって、両腕をふたつに折り曲げ、バタバタさせている。すぐ脇には、小さな女の子が立っている。男の人がしょっているのは、その子のバックパックなのは、見ればすぐにわかる。

若い黒人の女性が、Let me show you a little trick.(ちょっとしたトリックをお見せしましょう)と女の子に声をかけ、バックパックをするりと男の人の肩から外した。男の人は自由の身になり、うれしそう。知り合いなのだろうと思っていた。が、彼らはゲラゲラ笑いながら別れを告げ、男の人と女の子は私がやってきた方向へ、黒人の女の人は私のほうに向かって歩いてきた。

「今、何やってたの?」と彼女に声をかける。「子ども用のリュックをしょったら、外せなくなっちゃって、もがいていたのよ。だから、外してあげたの。ストラップを伸ばして、取ってあげただけ」。「知り合いなのかと思ったわ」と私。「違うわよ。赤の他人よ。そもそもどうやって、これ、背中にしょったわけ? って思わず、聞いちゃったわよ」と女性は笑う。

この話を、あとで友人のロブにした。「その男の人はたぶん、子どものときにリュックをしょったまま、大人になっちゃったんだろう」と真顔で言う。  東京だとこういうふうに、他人同士が気さくに声を掛け合うことはあまりないのよ、と私が黒人の女性に話すと、彼女が言った。

Sometimes you just have to break the ice.  

ときには誰かが思い切って、始めてみなければね。

でも最近、感じ始めた。東京もそういうふうになりつつあるのではないか、と。少なくとも私は、ニューヨークにいるときと同じように、東京でも赤の他人に話しかけ、気持ちよく会話が続くことが多くなった気がする。本当は多くの人が、そういう日常を求めているのではないか。そう思うと、日本にいてもなんだかわくわくしてくる。

今日は建築家の友人とブライアントパークの野外レストランでランチ。恥ずかしいので、顔は隠して…笑。というか、汗を拭いていただけですが、東京の猛暑とは比べものにならないほど、過ごしやすいNYです。

公園にて汗を拭く岡田光世

Photo: Having lunch with a friend of mine at an outdoor restaurant, overlooking Bryant Park behind the New York Public Library.

 

岡田 光世  / Okada Mitsuyo

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください